白雪姫プロジェクトは「誰もが思いを持っていて、回復する可能性がある」ということが当たり前になっていく世界をめざします

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回復していく方法があるのではないか?

は特別支援学校にこれまで30年以上勤めてきました。中には、植物状態と言われるお子さんとの出会いもありました。特別支援学校でお会いしてきたお子さんと取り組んできたこと、また友人(宮田俊也さん=宮ぷー)が脳幹出血で倒れて、回復していく過程を一緒に経験していることなどから、家族や周りにいる人でもできる回復方法があるのではないか、医療の立場にない私だからこそできることがあるのではないか、と考えるようになりました。

医療関係者ではなく、教育者として、あるいは毎日、リハビリに通っている家族に近いような立場として、学校の子どもたちが教えてくれたことに基づいて、今現在、私が特別支援学校のお子さんや、宮ぷーに接する際に、私自身がいいと思って取り入れている考え方、接し方やリハビリ(回復)方法について、まとめてみました。

私が一番大切に考えていること。

私が一番大切に考えていることは、どんなに重い障がいをもっておられても、誰でも、みんな気持ちを持っているということです。 
こちらからの働きかけにまったく反応がなかったときは、何もわかっていないと思ってしまいがちだと思います。でも、子供たちはそうではないといつも教えてくれます。

あるとき、生きる上での機能を除いて、脳が全くないと言われたお子さんの担当になったことがありました。CTの診断上は、「見えないし聞こえないし、何もわからない」ということでした。私ができることは、ただ、毎日抱きしめて、話しかけ、揺らし、歌を歌い、抱き上げて座るといったことを続けることでした。

けれども、やがて、そのお子さんは、私の足音が聞こえると、手足を動かしてくれるようになりました。そして、笑顔を見せてくれるようにもなり、その後、一本橋こちょこちょの童謡を歌いながら、顔の上をこちょこちょすると、こちょこちょの部分に来る前に笑いだすようになりました。

見えないはず、聞こえないはず。感じていないはずのお子さんでしたが、こちょこちょを期待して、その通りのことが起きたことがうれしくてたまらない様子に、そのお子さんもまた、思いを持っていることを教えてくれました。

入浴中の事故でCTでは脳が真っ白になってしまっていて、どんな刺激に対しても反応のなかったゆりちゃんが、やがてまぶたで返事をしてくれるようになり、久しぶりに出会ったときは、車いすに乗って、お母さんをじっと見つめているという姿にもお会いしたということがありました。(ゆりちゃんのページリンク)涙がとまらずに、お母さんの愛の大きさと、脳の回復の力を考えました。

他にも何人かの植物状態とお言われるお子さんとお会いするうえで、思ったことは、周りにいて、かかわっている人たちにとって、回復するうえで、一番大切なことは、意識がないように見えても、実は、全部わかっているし、聞こえているし、見えているのだと、疑いもなく、信じることのように思うのです。

脳はものすごく大きな可能性を持っている

そして、もうひとつの大切なことは、脳はものすごく大きな可能性を持っていると信じることのように思います。子供たちは、すぐに、変化を見せてくれることもあれば、何回も何回も、いろいろな取り組みをしたあとに、変化を見せてくれることもありました。いったい脳にはそのとき、どのような変化が起きているのでしょう。医療関係者でもない私には、本当のところ、分かってはいませんが、私は、脳には、お互いを補いあったり、あるいは、回復をしたりして、人間が本来持っている力を、また持てるようにする力があるように思うのです。

聖書に。「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ。さらば、見出さん。門を叩け。さらば開かれん」という言葉があります。出血によって、脳の扉がしまっていたり、切れてしまった軸策があっても、何度も何度も繰り返し、刺激を送り続ければ、一ミクロンの何万分の一ずつでも、伸びていくかもしれません。伸びている間は、つながっていないから、何の変化も起きなくて、そこであきらめてしまえば、伸びた軸策は決してつながらないけれど、あきらめなければ、必ずいつか、繋がって、治っていくのだと、私は思っています。そんなふうに思いながら、子供たちや宮ぷーと毎日をすごしてきました。

そんな毎日の中で、私は、植物状態と言われている人たちにも回復する方法があるのではないかと思えてきました。もちろん医療の中には踏み込むことはできませんが、教育の現場や介護の中で、もし、方法があるのなら、その方法を多くの方に知っていただきたいと思うようになりました。

回復の兆しが見えてきたときの喜びは、言葉には言い表すことができないほどです。また御家族の喜びの涙に出会うことができたときにも、涙がとまらなくなります。
医療の立場にない私だからできることがないのか、そんな思いも大きく膨らみます。

その中で私がしてきたことを具体的に、書いてみたいと思います。ただここであらかじめお話ししておかなくてはならないことがあります。子供たちや患者さんの様子はいろいろです。あるときには、脳の疾患の他に、骨粗鬆症であるとか、心臓病であるとか、また、他の病気を併せて持っておられて、私がしてきたことが適さない場合も多くあると思うのです。どうぞ、十分に目の前の大切な方の様子をよくごらんになられて、そして、あるいは、病院のお医者さまにも相談されて、参考にしていただけたらありがたいです。

あらゆる感覚に働きかける

*心に働きかける。
…話しかけ、励まし続ける。
特別支援学校の子供たちが教えてくれたことは、誰もが思いを持っているということです。どんなに重篤な状態であっても、また、外からの刺激にまったく反応が返ってこなかったとしても、ただ、お返事や反応ができないだけで、みんな必ず、感じたり、思いを持っていると私は思います。

・顔の近くで、話しかけるようにしています。
・将来を失望するようなマイナスなことは言わないで、一緒に頑張ろう、大丈夫と励まし続けています。 顔の近くで話しかける
・子どもたちの場合は、私は背中に手を回すようにして、抱きしめてゆらすようにしながら、話しかけることが多いです。「揺らす」とか「抱きしめる」ということは、脳幹によく働きかけるのだろうと、ドクターの方が教えてくださったことがありました。

*耳に働きかける
声だけでなくて、音楽もまた、よい刺激になると思うのです。けれど、ずっとテレビをつけっぱなしだったり、音楽が鳴りっぱなしがよいとばかりは言えないと思うのです。とくに、たくさんの音が鳴っているのはよくないと思います。話しかけるときは他の音は消すことが、大切のように思います。
私たちはテレビがついていても、ラジオから音が流れていても、目の前の人のおしゃべりは、その音と区別して、脳に届きます。けれども、宮ぷーの場合もそうでしたが、子どもたちの中にも、二つの音を区別できないで雑音のように聞こえてしまっていると感じることがあります。

*鼻に働きかける
アロマのかおりを、そばに置くのもよいと思います。気切があいていても、少しはにおいがかけると思います。村上先生のコメントに出てこられる鈴木順子さんのお母様のももこさんは、ベッドの枕元にアロマの香りを絶やさなかったそうです。宮ぷーの枕元にも、いつも香りを置くようにしていました。

*口に働きかける
口や顔は脳にとても近く、三叉神経と直接つながっているのだそうです。そこで、刺激は脳に届きやすいのだと思われます。
子どもたちの授業でも、それから、宮ぷーとも、歯磨きや、電動歯ぶらしの背などで、頬の内側や外側を刺激することをよくしてきました。
けれど、歯磨きをすると、汚れた唾液がたまりやすく、それが、肺の方へ流れていくと大変です。吸引してもらいながら行ないました。
けれど、吸引しながらがむずかしくても、歯磨きティッシュを使ったり、クルリーナなどを使えば、水分も痰もからめとることができます。
子どもさんの中には、口が開いたままになっているために、口の中が乾燥してしまって、痰が塊のようになって、口の中に痰の塊を持っていたり、おそらくはばい菌がいっぱい繁殖してしまっていたのか、臭いのある場合もありました。そんな場合は唾液を誤嚥することで、肺炎になってしまう可能性もあると思うのです。ジェルを使うなどして、根気よく、口の中をきれいにしているだけで、閉じていた目がぱっと開いたという経験もあります。口の刺激は本当に大切なのだと、私は実感しています。ぜひ、口腔ケアのページを見ていただけたらと思います。
また頬を引っ張ったり口びるをひっぱったり、顔のマッサージも効果的だと思います。

*すわること
寝かしたままにしておくと、廃用症候群という症状が起きます。いろいろな病気が起きるだけでなく、脳もまた眠った状態になりやすいのではないかと思います。
私は、子どもたちといて、寝かしたままの状態から起こすということを一日に10分でも20分でもしていることで、意識の状態がすごく改善されているということを実感してきました。頭を高いところに置くと重力が、脳になんらかの刺激を送ってくれるのだろうかと思います。

それで、宮ぷーも、なんとか、ベッドをあげて起こすようにしました。また看護師さんやお医者さんとも相談しながら、ベッドの横に足を出して座る端座位の姿勢、また、首がしっかりしてきた後は、ベッドがあがることを利用して、立位の姿勢も一日に一度でも取れるようにしてきました。けれど、一人でするときには安全な方法が必要です。介護法などで、座らせる方法などを練習したあと、安全に十分気をつけられてされるといいと思います。それから、このときに十分注意しなければならないのは、褥瘡です。座ると、どうしても、おしりの骨のところに圧力がかかりやすいです。ですから、たとえば糖尿病などの病気をお持ちの方は血液がまわりにくい症状が出やすいかもしれないので、注意が必要だし、そうでない方も、時間を決めて行う必要があると思います。子どもたちや宮ぷーと行うときは、音楽をかけて、最初は一曲のあいだ、がんばろうと声をかけておこないました。座るのは最初はとてもつらいものだと思います。それから、二曲、三曲と決めて行いました。その方が座っている人も、見通しを持って座ることができてがんばれると思います。
また、酸素濃度にも注意する必要があると思います。顔色を見ながら行うことが必要だし、座ることで、唾液が、肺へ入って行く場合(誤嚥)も考えられます。
私の場合は、たくさんのリスクがあってもやめてしまうというのでなく、病院の先生や御家族にうかがいながら、注意しながら行うというふうにしています。

*手足を動かすこと
手や足が脳からの命令がなくて、動かないなら、手足の方から、脳へ「動け!」「動け!」と信号を送ろうと、宮ぷーの場合は、一日に100回ずつ動かしています。右手右足は自分で動かせるようになってきているので、その場合は、自分で動かしやすいように手で補助をしながら、動かしてもらっています。
けれど、ここでも大切なことがあります。長い間動かさなかった場合、手足や体が固くなり拘縮が起きている場合があります。ずっと横になっていると骨ももろくなっている場合もあります。だから、無理は禁物。そんな場合、私は、これ以上動かないという場所までまげて、あとは、私の手の重みで10秒だけ押す。また戻す。また10秒だけ押すというふうにくり返すことをしてきました。根気がいりますが、それで、柔らかくなる場合があります。けれど、本当に骨がもろくなっておられる場合もあります。十分注意が必要です。
それから、宮ぷーの場合は、低周波振動装置も使っています。筋肉を動かしてくれる装置です。家庭用のものを買って使用していますが、痛みや不快感がある場合もあると思うので、様子を見ながらされるのがいいと思うのです。子どもたちの場合もおうちの方や病院の先生と相談したり、一緒に様子を見ながら、行うことが多かったです。

*皮膚へも働きかける
温かいお湯につけてしぼったタオルで、顔を拭いたり、体を拭いたり、手足をお湯につけるということもよく行います。また寝たままにしていると、体が乾燥しやすいようにも思います。マッサージクリームをつけて、体のいろいろなところ、指などもマッサージすることは大切だと思います。

*爪にも働きかける
手足をつかわないと、手足の爪の端っこが丸くまるまってきて、分厚くなります。おそらく、私たちは歩いたり、指をつかうことで、指に力を加えて、それで、爪が平らになっているものと思われます。なかなか爪が変形しないまで、ていねいに指のさきに力を加え続けることは難しいけれど、爪には多くの神経が集まっているそうです。一日に何度か全部の爪を上から押さえるようにしています。

*歯磨きなどを自分がしているようにすること
歯磨き、顔ふき、ひげそりなど、手足が動かないからできないけれど、でも、手に持たすようにして、日常のことをするようにしています。介助者や家族がしてしまうほうがもちろん簡単でらくですが、脳はもしかしたら、昔ひげそりをしたことを覚えているかもしれません。宮ぷーも、人からされるときは、そんな様子がみられないのに、自分であたかもするようにして手を添えたときだけ、自分でひげがそりやすいように、鼻の下をのばしたり、あごをあげるなどの様子が見られるようになりました。

*車いすに乗ること、出かけること
同じ場所にずっといるより、病室の外、また病院の外へ出かけることはとても大きな刺激になるのだと思います。そのときに必要となるのは、車いすです。
車いすに乗ることは、姿勢がかわるということだけでなく、大きな効果があるように私は感じています。
以前、やはり、脳のCTではどんな働きかけにもよい脳波がでなかったというお子さんが、外に出て風に吹かれたときなどに、よい脳波が出たということをお医者さんと一緒にさせていただいて、経験しました。
私の車はふだんは普通の車として使っていますが、助手席が外に出てくるようになっている福祉車両です。ドライブや買い物などに出かけることは、きっと良い刺激になるに違いないと思っています。

*記録をとること
回復は早い場合もあるけれど、一年も二年もたってようやく変わることもあります。また、ほんの少しずつの変化で、気が付けば変わっていたということがあります。あまり変化がみられないと、あきらめてしまいそうになりますが、記録をつければ、去年はできていなかったことができている。少し変わっているということに気が付けて、元気をもらえるなあと思います。このごろは動画も簡単に携帯などでとれるようになりました。宮ぷーも動画の記録をたくさん撮っています。

楽しくリハビリを行うこと。

変化があっても、変化がなくても、いっぱいほめて、すごいねということはとても大切と思います。だって、誰でも、ほめられたらうれしいし、ダメと言われたら悲しいです。そして、楽しいことをいっぱいみつけて、それから、毎日、時間の終わりに「よかった」探しをします。それは大きなコツのように思うのです。

よかったことは必ずいつもあります。何もないように思えるような日も「でも、生きてるよ、よかった」「ほら、今日も一緒に会えたよ、よかった」「昨日よりちょっとだけ熱がさがったよ、よかった」というふうによかったことが見つけられる、そして、回復に感謝もできます。よかったよかったと思うことは、私にとって、とても大切です。
それから、日々を送っている中にはたくさんのいろいろなことも起きます。宮ぷーの場合も、膀胱結石になって、手術をすることになったり、本来は骨でない部分が骨にかわる病気も経験しました。でも、どんなことも、あとで思えば、それも必要だった、どんなこともいつかのいい日のためにあるから大丈夫とおもうことも、私にとっては大切なことです。